短甲(たんこう)は弥生時代から古墳時代にかけて用いられた甲(鎧、よろい)の形式名のひとつ。 木製・革製・鉄製のものがあり、原則として肩から腰の胴体を保護する。胴甲。 主に古墳の副葬品として出土し、埴輪や石人にも見られる。方形や三角形の鉄板や革などの素材を人間の胴体に合うように加工し、板を合わせて鋲で留め蝶番による開閉装置が施された。腰部がくびれた形となっている。
副葬品として出土する甲には2代形式があり、「短甲」の呼称は奈良時代の文献である『東大寺献物帳』(天平勝宝8歳・756年)や『延喜式』などの文献において「短甲」と「挂甲」の記述や見られるため、明治期の考古学や歴史学において歩兵用と騎馬兵用に対応するとして「短甲」の名称が当てられた。文献においては「短甲一領」が胴部のみのものを意味し、「短甲一具」が草摺や冑、肩甲、頸甲、篭手、脛当などの装備一式を意味すると考えられているが、一具の出土例は見られない。
現存するのは主に鉄製や金銅製のものであるが、有機質材料が併用されていた可能性が指摘されており、近年は弥生時代終末期の遺跡から木製や革製、植物繊維を編んで漆を塗ったものなどさまざまな有機質材料の短甲も出土している。木製短甲は丸太の湾曲部を残して刳り貫いたものや、方形板を合わせて漆を塗ったもので、文様や着色などの装飾が施されているものもある。
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木製短甲は、背側と胸(胴部)側を別個につくり、紐で綴じ合わせる型式のもので、弥生時代後期の静岡県浜松市伊庭遺跡の溝から出土し、古墳時代の実例は、奈良県橿原市坪井遺跡の前期の溝から出土している。前者の短甲はヤナギ材でつくられており、前胴に当たる部分と背当ての部分の2点が出土している。表面には同心円文や渦巻文、平行線文、羽状文、三角文などの文様が凸状に明瞭に刻まれている。さらに、それらの文様は赤色顔料や黒漆で塗り分けられている。材質が木製であることや呪術的な文様などから実戦用ではなく祭具用と考えられている。
古墳時代には鉄製短甲が出現し、横矧板鋲留が安定した形式として普及する。6世紀には出土遺物としては見られなくなり、桂甲(けいこう)に代わられている。
中国の歩兵用の鎧の影響が色濃く、同時期に用いられた鎧に、中国北方の遊牧民の騎兵用の鎧の影響を色濃く受けた挂甲(けいこう)がある。また、平安時代の大鎧には短甲の胴部開閉方式が継承されているとする指摘もある。